対象不動産が基準容積率をオーバーしているときに、特定道路の容積率緩和規定が適用されれば基準容積率が増え、容積率超過が無くなる場合があります。
今回は特定道路の容積率緩和規定についてご説明します。
特定道路の容積率緩和とは
建築基準法52条9項に規定されている措置であり、前面道路が狭いため、基準容積率が指定容積率以下になってしまったとき、近くに広幅員の道路があれば、前面道路の幅員に一定数が加算される規定です。
建築基準法52条9項
前面道路の幅員の緩和措置ともいいます。
上記の条文を簡単にまとめますと、以下の3つの要件を満たした場合、前面道路の幅員に査定した数値を加算するとあります。
3つの要件
- 前面道路の幅員が6m以上ある
- 近くに幅員15m以上の道路(特定道路といいます)がある
- 特定道路までの距離が70m以内である
以下、要件ごとに調べ方を説明します。
step.1 前面道路の幅員が6m以上あるか
前面道路の調査は現地においてウォーキングメジャー等の測量器具で測ります。
また、市役所の道路管理課等の窓口で認定幅員を調査します。
そして、どの幅員を採用できるかを市役所の建築指導課等の建築確認を行う窓口において確認します。
現地の幅員を重視する場合や、認定幅員を重視する場合など、市町村によって取り扱いが異なります。
なお、当該規定で前面道路が12m未満の道路とされている理由は、前面道路が12m以上の場合は指定容積率をそのまま基準容積率とすることが出来るからです。
step.2 近くに特定道路があるか
道路幅員の調査は前述の前面道路の幅員調査と同じです。
GoogleMapなどで近くにある広幅員の道路を測り、使えそうなら現地・役所にて正確な幅員を調べます。
step.3 特定道路までの距離が70m以内か
まずは机上において距離を測ります。
メジャーどころで言えば、GooleMapの距離測定や、ゼンリンの住宅地図で測ります。
精度が高い公図(甲・乙)がある場合には、それも使えます。
ただし、正確な距離を机上のみで確定することは危険ですので、現地にてウォーキングメジャーなどを使用して測ります。
特定道路と斜めに接道している場合や、曲がり角を介している場合などは、測り方の決まりがありますので、詳しくは後述します。
まずは、机上で測り、その後、現地でも測る
前面道路に加算できる数値の算定
算定の計算式は建築基準法施行令135条9項において規定されています。
建築基準法施行令135条9項
Wa=(12-Wr)(70-L)/70
(この式において、Wa、Wr及びLは、それぞれ次の数値を表すものとする。
Wa 法第五十二条第九項の政令で定める数値(単位 メートル)
Wr 前面道路の幅員(単位 メートル)
L 法第五十二条第九項の特定道路からその建築物の敷地が接する前面道路の部分の直近の端までの延長(単位 メートル))
文字だけでは難しいので図にすると以下の通りです。
特定道路の容積率緩和の練習問題!
それでは、練習問題を作りましたので、一緒に基準容積率を査定しましょう。
現地・役所調査の結果は以下の通りでした。
前面道路が12m未満なので、普通に基準容積率を査定すると以下の通りとなります。
基準容積率 6m ✕ 0.6 ✕ 100% = 360%
指定容積率が小さく、この時点で指定容積率=基準容積率となる場合には次のステップに進む必要はありません。
次に、特定道路までの距離が70m以内であり、前面道路が6m以上ですので、特定道路の容積率緩和措置が使えます。
したがって、加算できる数値であるWaを算出します。
Wa=(12-6m)(70-35m)÷70
Wa=3
Waを算出することできましたので、Waを前面道路の幅員に加算して、基準容積率を査定します。
基準容積率 (6m+3)✕ 0.6 ✕ 100% = 540%
よって、基準容積率は緩和規定により180%もプラスされ、540%なりました。
このように、当該規定により容積率は大幅に緩和される可能性があります。
もし、調べている不動産が容積率オーバーと判断されて場合、当該規定に当てはまらないかを忘れにチェックするようにしてください。