不動産鑑定士が実務において調べた不動産鑑定理論や建築基準法等について綴ります。

不動産鑑定士のブログ

建ぺい率超過の調べ方

金融機関等から融資を受ける際に、担保となる不動産の遵法性が問われることが多く、基準建ぺい率内に使用建ぺい率が収まっているのかが重要なポイントとなります。

建ぺい率とは

建ぺい率とは建築面積の敷地面積に対する割合をいいます。建ぺい率には種類があります。

指定建ぺい率

都市計画により指定されている建ぺい率をいいます。市役所の都市計画課等で調査することができます。

基準建ぺい率

対象不動産に適用される建ぺい率をいいます。指定建ぺい率に対し、各種緩和措置を適用して決定します。

使用建ぺい率

対象不動産が実際に使用した建ぺい率をいいます。
計算式で表すと「使用建ぺい率=建築面積の合計÷敷地面積」で表すことができます。
建築面積は水平投影面積であり、上空から見下ろした面積です。基本的に地階は含まず、バルコニーについても別規定がありますが、実務において簡単に判断する場合は、登記で地階を除く一番広い階層の面積を使います。

建ぺい率超過とは

建ぺい率超過とは、基準建ぺい率を使用建ぺい率が超過している状態をいいます。

検査済証による建ぺい率超過の判断

現在の建物が完了検査を受けており、検査済証が発行されている場合は、建ぺい率超過の可能性は低いです。ただし、以下の場合には検査済証があったとしても、完了検査後に以下の行為があった場合は超過の可能性が疑われます。

ポイント

検査済証があるからといって、超過がないとは限らない

増築がある場合

建築面積は水平投影面積ですので、外に増築部分があり、建物を広くしている場合や、中央の吹き抜けをなくしている場合などには、建築面積が大きくるため、建ぺい率超過の可能性が出てきます。
ただし、増築に際しても完了検査を受けている場合は、超過の可能性は低いです。

敷地分割がある場合

完了検査後に、敷地を分割している場合には敷地面積が減少することから建ぺい率超過の可能性が生じます。
確認方法は、登記簿謄本をチェックして、完了検査後に敷地分割がないか、分割されている場合は、所有権移転がされていないか、を確認します。

都市計画の変更がある場合

都市計画の変更により用途地域等が変わると、指定建ぺい率が変更される場合があります。その際、60%→50% に変更されるなど、指定建ぺい率が減少した場合は、建築当時に適法に建築されていたとしても、現行基準においては不適格となります。このような建物は既存不適格建築物と呼ばれます。既存不適格建築物は適法であり、遵法性に問題はないことから、金融機関の融資に問題ないことが多いです。ただし、将来の建て替え時において同等の建物を建築することができないことから、評価額の減額を行う場合があります。

上記以外での建ぺい率超過の判断

検査済証がない、検査済証はあるものの建物増築等が行われている場合の建ぺい率超過の判断は次の通り行います。

まず「使用建ぺい率=建築面積の合計÷敷地面積」 にて、査定します。
建築面積はまず、建物登記簿謄本で地階以外で一番広い階層の面積を使用します。次に、建物図面にて一番広い階層からはみ出している階層がある場合には、はみ出している部分を加算します(1階よりも2階部分がせり出している場合等には、せり出している部分を加算する)。附属建物が登記されていれば、それも加算します。計算した範囲外に未登記増築がある場合には、それも加算します。
敷地面積は土地登記簿謄本の面積を使用します。ただし、地積測量図がない場合や、地積測量図で残地計算されている場合には、当該面積はあまり当てになりません。また、42条2項道路に接道している場合などで、道路負担が生じている場合には、当該面積を控除する必要があります。このような場合は、建築計画概要書に記載されている敷地面積を採用します。この敷地面積は有効面積であり、建築確認時において承認されている地積ですので、信憑性が高いです。ただし、実際に測量した地積よりも信憑性は劣りますので、費用はかかりますが測量するのがベストです。測量できる場合はその面積を採用します(道路負担等は計算して控除する)。

指定建ぺい率 > 使用建ぺい率 の場合

この場合、建ぺい率超過の可能性は低いです。ただし、完了検査を受けていないため、建物図面通りに建物が建築されているとは限らないことから、超過の可能性はゼロではないことにご注意ください。それでも現地で軽く計測して、建物図面と比較して大きくズレていなければ、問題ないかと思います。

指定建ぺい率 < 使用建ぺい率 の場合

この場合、建ぺい率超過の可能性がありますので、緩和措置がないかを調査し、基準建ぺい率を査定します。

不動産鑑定評価においては、超過の有無に関係なく、必ず調査しています。


緩和措置の種類は以下の通りです。

  • 角地緩和
  • 防火地域内の耐火建築物
  • 準防火地域内の耐火建築物、準耐火建築物等
角地緩和について

俗に、角地緩和といわれていますが、二方路にも適用があるほか、公園・広場・河川等に接する土地においても適用がある場合もあります。
条件を満たせば10%の緩和を受けることができます。
当該緩和は、建築基準法第53条3号2項において

街区の角にある敷地又はこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物

と規定されています。
特定行政庁と書かれているとおり、特定行政庁毎に緩和要件がことなりますので、どのような角地でも緩和されるわけではないので、ご注意ください。
接道している道路の幅員(道幅のこと)や、接道している敷地の範囲、角度、二方路の場合は道路と道路の敷地の距離等の要件があります。
要件はウェブで調べることが出来ることが多いですが、判断がつかない場合は、不動産が存する特定行政庁(市役所や土木事務所等)の建築指導課等の建築確認を行っている窓口に相談すると教えてくれます。

防火地域内の耐火建築物の緩和について

指定建ぺい率が80%とされているエリアにおいては、20%緩和されて100%になり、指定建ぺい率が80%未満のエリアにおいては、10%の緩和を受けることができます。
当該緩和は、建築基準法第53条3項1号

防火地域(建蔽率の限度が十分の八とされている地域を除く。)内にあるイに該当する建築物又は準防火地域内にあるイ若しくはロのいずれかに該当する建築物 」イ「 耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(「耐火建築物等」)

建築基準法第53条6項1号

防火地域(建蔽率の限度が十分の八とされている地域に限る。)内にある耐火建築物等

と規定されています。
防火地域については、各市役所の都市計画課等で教えてくれます。
防火地域と準防火地域にまたがって建物が建築されている場合においても、建物が耐火建築物であれば、当該緩和を受けることができます(建築基準法第53条7項)。
検査済証を取得していない建物の場合、実際に耐火構造になっているのか不明ではありますが、防火地域においては基本的に耐火建築物しか建築できないことを鑑み、実務では、木造等の明らかに耐火構造が無さそうの場合以外は、耐火構造として取り扱っています。

準防火地域内の耐火建築物、準耐火建築物等の緩和について

令和元年に追加されて新しい規定です。 準防火地域内の耐火建築物、準耐火建築物等は建ぺい率が10%緩和されます。
当該緩和は、建築基準法第53条3項1号 ロ

準耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(耐火建築物等を除く。第八項及び第六十七条第一項において「準耐火建築物等」という。)

において規定されています。
この緩和規定の追加により、準防火地域内の建物においても建ぺい率緩和が行われるため、いままで建ぺい率超過とされていた不動産についても現行法において適法とみなされる可能性があります。もっとも、完了検査を受けていない建物については、準耐火建築物等の範囲に入るか不明であるため、特定には建築士などの専門家の意見が必要となる可能性があります。

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