不動産鑑定士が実務において調べた不動産鑑定理論や建築基準法等について綴ります。

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建ぺい率とは

物件の遵法性で主な問題となる建ぺい率と容積率のうち、今回は建ぺい率についてご説明します。

建ぺい率について

そもそも建ぺい率とは何かを説明します。

建ぺい率の根拠

建ぺい率は、建築基準法第五十三条に規定されています。

建築基準法第五十三条

第五十三条 建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建蔽率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。
一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、田園住居地域又は工業専用地域内の建築物 十分の三、十分の四、十分の五又は十分の六のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
二 第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域又は準工業地域内の建築物 十分の五、十分の六又は十分の八のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
三 近隣商業地域内の建築物 十分の六又は十分の八のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
四 商業地域内の建築物 十分の八
五 工業地域内の建築物 十分の五又は十分の六のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
六 用途地域の指定のない区域内の建築物 十分の三、十分の四、十分の五、十分の六又は十分の七のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの

建ぺい率は「日照や通風など環境を衛生に保ち、防火や避難などの安全性を備えることを目的」として定められており、都心では防火地域等が定められていることや、ビル等がメインの建物になることから日照などの環境は重視されないため、建ぺい率規定は緩いです。逆に住居系は環境等が重視されるほか、木造建物等の燃え移りやすい建物が多いので、防災の観点からも建ぺい率規定は厳しくなっています。

建ぺい率は、敷地に対する建築面積の割合を言います。

建築面積とは?

では、建築面積とはなんでしょうか?

建築面積は、建築基準法施行令第二条に規定されています。

建築基準法施行令第二条

第二条 次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二 建築面積 建築物(地階で地盤面上一メートル以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離一メートル以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。

難しく書かれていますが、建築面積は水平投影面積であり、上空から見下ろしたときの面積に近いです。

建築面積は水平投影面積!

通常の建物の場合は、地階は除いて、登記面積で一番広い面積を使うことが多いです。
特殊な建物の場合、例えば、1階と2階がズレているような形状の建物の場合ですと、水平投影面積ですのでズレ分を加算する必要があります。水平投影面積であることに注意してください。
なお、完了検査を受けている建物の場合には、建築計画概要書に建築面積の記載がありますので、それを使います。ズレ分や1mを超える軒等が加算されるため、登記より大きくなることがほとんどです。
なお、建築計画概要書の確認日以降に附属建物の追加や増築がされている場合には加算する必要があります。

次に、カッコ書き「軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線」の規定には注意が必要です。
例えば、バルコニーは下の階のひさしになるため、上記の規定にハマりますので、登記面積から1m分引きたくなります。しかし、通常のバルコニーやベランダはそもそも登記されていないため、1mの後退分を引くことはできず、逆に1m超の部分を加算する必要があります。
ちなみに、実務においては、建ぺい率がメイン論点となり、どうしても詳細を調べなければならない状況で無い限りは、カッコ書きに注目することはあまりありません。その場合においても、不動産鑑定士は建物の専門家ではないため、建築士の意見書等により対応することが多いです。

指定建ぺい率の調べ方

指定建ぺい率とは上記の建築基準法53条に規定されている選択肢を、都市計画において定めています。
調べ方は、市町村の都市計画を扱っている課や係(大体は都市計画なんちゃら課)に行けば教えてくれます。
インターネットでも調べることが出来ますが、「インターネット上の情報はあくまで参考であり、正確には窓口でお尋ねください。」などと注意文が書かれていることが多いです。
また、市町村の公式サイト以外の第3者のサイトである場合もありますので、ご注意ください。

実務では、窓口や設置端末で正確な情報を調べましょう

用途地域が跨っている場合

用途地域が跨っており、建ぺい率の指定が異なる場合があります。
その場合、面積按分して指定建ぺい率を査定します。
例えば、全体で500㎡の敷地のうち、300㎡が80%の地域、200㎡が60%の地域だった場合。
(300?80%+200?60%)÷500=72%
よって、指定建ぺい率72%となります。

なお、またがっている場合には、どれだけの面積がどっちの用途地域に入っているのかを査定することになりますが、都市計画図に例えば道路境から30mなど規定されているため、地積測量図等に線を引いて計算します。
地積測量図が無い場合や、地積測量図が残地計算であるなど信頼出来ない場合には、公図や衛生写真、固定資産税課が保有している地番図など、より精度が高い図面を手当り次第チェックすることになります。比較的新しい建築計画概要書には各用途地域毎の面積が記載してある場合もあります。最悪の場合は測量となりますが、お金が掛かるため、余程のことがない限りはそこまでには至りません。

基準建ぺい率の調べ方

指定建ぺい率を調べたら、次は基準建ぺい率を調査します。
基準建ぺい率とは対象不動産に適用される建ぺい率のことをいいます。
具体的には、建ぺい率の緩和規定の適用がないかを調査して、指定建ぺい率を調整します。

緩和措置の種類は以下の通りです。
・角地緩和
・防火地域内の耐火建築物
・準防火地域内の耐火建築物、準耐火建築物等

これから建物を建てる場合には基準建ぺい率を超過しないように計画をします。
すでに建っている建物の場合には、使用建ぺい率を調べて、基準建ぺい率を超過していないかを調べます。

使用建ぺい率の調べ方

使用建ぺい率とは、その名の通り、現況の建物が使用している建ぺい率です。

建築面積を敷地面積で除する事によって求めます。
例えば、敷地面積500㎡で建築面積300㎡の場合は使用建ぺい率60%(=300÷500✕100%)となります。

新しめの建築計画概要書には使用建ぺい率も記載されています。
古い建築計画概要書の場合にも、敷地面積と建築面積の記載はあるので、上記の通り計算したら算出できます。

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