宗教法人法により、不動産の処分(売買など)や担保の供与(不動産に抵当権をつけるなど)を行う場合には、公告をしなければなりません。
恐ろしいことに、公告をしなかった場合、売買などは無効となります。
以下、該当の宗教法人法の抜粋です。
一 不動産又は財産目録に掲げる宝物を処分し、又は担保に供すること。
二 借入(当該会計年度内の収入で償還する一時の借入を除く。)又は保証をすること。
三 主要な境内建物の新築、改築、増築、移築、除却又は著しい模様替をすること。
四 境内地の著しい模様替をすること。
五 主要な境内建物の用途若しくは境内地の用途を変更し、又はこれらを当該宗教法人の第二条に規定する目的以外の目的のために供すること。
第二十四条 宗教法人の境内建物若しくは境内地である不動産又は財産目録に掲げる宝物について、前条の規定に違反してした行為は、無効とする。但し、善意の相手方又は第三者に対しては、その無効をもつて対抗することができない。
この条文の趣旨は、信者や利害関係者に黙って、勝手に財産が処分されることを防ぐことにあります。
これに反し、公告をせずに売買を行った場合、売買が無効になります。
第24条の文言に「善意の相手方又は第三者に対しては、その無効をもつて対抗することができない。」とあります。
これは、判例から考えると善意無重過失あると推定できます。
不動産には登記簿があり、過去に宗教法人が所有していたことや、地目が「境内地」であったことなどが一目瞭然ですので、宗教法人が所有していたということを知らなかったというのは困難です。
また、この法律自体を知らなかったというのは理由になりません。
したがって、公告を行っていなかった場合、無効の訴えに対抗するのは困難と言わざるを得ません。
結論 公告のエビデンスを取得しましょう
取引の無効は過去に遡るので、売買などの際には、当時の公告だったり、宗教法人の議事録であったりを収集し、万が一の無効の訴えに対し、善意であることを証明するエビデンスを取得しておくように心がけてください。
特に、宗教法人から直接取得する場合は、必ずエビデンスを取得してください。
なお、宗教法人との直接の取引時が最も「無効の訴え」が行われる可能性が高いので、当時から相当年数が経過し、複数関係者を経由した不動産に対し「無効の訴え」がなされるリスクは比較的低いですが、可能な限りエビデンスの取得に努め、エビデンスが取得出来なかった場合には、相応のリスクがあることを認識して取引をする必要があります。
ちなみに、競売においても境内地などが出回る場合がありますが、不動産の処分に該当するので、基本的には公告が必要となります。
もっとも、競売において公告をしておらず、無効の訴えがされた場合、抵当権を設定する際にも公告は必要であったため、その際に公告がなされていたのか、競売時に公告をする余地があったのか、などの要因を総合的に勘案して裁判が判決を下すことになります。