不動産を取得する際に、建ぺい率を超過していた場合、遵法性の観点から融資を受けれない可能性があります。
建築基準法が令和元年6月に改正されたことにより、準防火地域においても建ぺい率が緩和されることになりました。
準防火地域内の耐火建築物、準耐火建築物等の緩和について
準防火地域内において耐火建築物等、準耐火建築物等を建築した場合、建ぺい率が10%緩和されます。
根拠条文は以下の通りです。
建築基準法第53条3項1号
3 前二項の規定の適用については、第一号又は第二号のいずれかに該当する建築物にあつては第一項各号に定める数値に十分の一を加えたものをもつて当該各号に定める数値とし、第一号及び第二号に該当する建築物にあつては同項各号に定める数値に十分の二を加えたものをもつて当該各号に定める数値とする。
一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域を除く。)内にあるイに該当する建築物又は準防火地域内にあるイ若しくはロのいずれかに該当する建築物
イ 耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能(通常の火災による周囲への延焼を防止するために壁、柱、床その他の建築物の部分及び防火戸その他の政令で定める防火設備に必要とされる性能をいう。ロにおいて同じ。)を有するものとして政令で定める建築物(以下この条及び第六十七条第一項において「耐火建築物等」という。)
ロ 準耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(耐火建築物等を除く。第八項及び第六十七条第一項において「準耐火建築物等」という。)
条文には防火地域の説明もあり、ややこしいですが、簡単に言うと、「準防火地以内の耐火建築物等と準耐火建築物等は建ぺい率を10%緩和する」と書かれています。
それは、調査の方法を説明いたします。
要点は、「準防火地域に位置するか」及び「耐火建築物等・準耐火建築物等に該当するか」になります。
準防火地域の調べ方
準防火地域は都市計画において設定されており、根拠条文は以下の通りです。
都市計画法9条21項
防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする。
都市計画法の条文はあっさりしたものですが、どのような建築物が建築可能かは建築基準法において規定されています。
準防火地域の調べ方は、基本的には役所の都市計画課等の都市計画を扱っている部署で調査します。
インターネットで公開している市町村も多いのですが、正確な情報は窓口または設置端末としてるところが多いのでご注意ください。
例えば大阪市ですと、マップナビ大阪において、都市計画関係の情報が公開されています。
次の画像でいいますと、道路境から11m超の黄色が準防火地域、11m以内の赤色が防火地域です。
とても便利ですが、以下の注意文が記載されています。
4の項を見ていただきますと「参考図なので、窓口にこい」と書かれています。
都市計画関係の地図で誤りを見かけたことはありませんが、道路名称の図面は偶に間違っています。
鑑定評価書や重要事項説明書等の間違っては行けない書類を作成するときには、もっとも正確な情報を取得しましょう!
耐火建築物・準耐火建築物の規定
耐火建築物及び準耐火建築物は建築基準法において規定されています。
耐火建築物
以下の条文により規定されています。
建築基準法2条9の2項
九の二 耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
(1) 耐火構造であること。
(2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
(i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
(ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。
まず、(1)にかかれている耐火構造ですが、これに関しましても当然に規定があります。
建築基準法2条7項
七 耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
分かりやすいのが「鉄筋コンクリート造」が耐火構造であり、耐火建築物の典型例となります。
鉄骨は鉄なので燃えにくそうですが、熱に弱く曲がりますのでそのままでは耐火構造とはなりませんので、耐火構造規定の「その他の構造」もしくは、耐火建築物規定の(2)に当てはまってくるかと思います。
準耐火建築物
以下の条文により規定されています。
建築基準法2条9の3項
九の三 準耐火建築物 耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。
イ 主要構造部を準耐火構造としたもの
ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの
耐火構造に続き、準耐火構造がでてきましたが、こちらも当然に規定されています。
建築基準法2条7項
七の二 準耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能(通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。第九号の三ロにおいて同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
ここまでくると、建築士等の建物の専門家でないと、どれが準耐火構造なのか明言できないと思います。
耐火建築物・準耐火建築物を調べる方法
上記において、耐火建築物・準耐火建築物の規定を説明しました。
しかし、対象不動産が耐火建築物・準耐火建築物であるかを調べるのは中々難しく、建物に精通していないものが判断するのは困難です。
では、どうするかというと、建築計画概要書で確認します。
建築基準法及び建築基準法施行令により、防火地域及び準防火地域に内に建築可能な建物は決まっており、当該基準に照らして建築許可がおりていることから、それ以上の防火構造を有していることになります。
例えば、防火地域内における建物は、耐火建築物または準耐火建築物ですし、準防火地域内において4階以上の建築物は耐火建築物であり、3階以下でも500㎡超であれば準耐火建築物以上の耐火性能を有しています。
なお、完了検査を受けていない検査済証が発行されていない建物については、建築確認がおりた建物と同じ建物が建築されているとは言えないことから、安易に耐火構造を決めつけ、建ぺい率緩和の対象になるとするのは危険です。
以下、防火地域及び準防火地域にて必要とされる耐火性能をまとめました。
上記表の根拠条文は以下の通りです。
なお、令和元年6月の改正前は建築基準法61条にまとめて規定されていましたが、改正後は建築基準法61条と建築基準法施行令第136条の2に分けて規定されています。
建築基準法61条
第六十一条 防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ二メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。
建築基準法施行令第136条の2
第百三十六条の二 法第六十一条の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 防火地域内にある建築物で階数が三以上のもの若しくは延べ面積が百平方メートルを超えるもの又は準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が四以上のもの若しくは延べ面積が千五百平方メートルを超えるもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第百七条各号又は第百八条の三第一項第一号イ及びロに掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備(外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備をいう。以下この条において同じ。)が第百九条の二に規定する基準に適合するものであること。ただし、準防火地域内にある建築物で法第八十六条の四各号のいずれかに該当するものの外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間(建築物が通常の火災による周囲への延焼を防止することができる時間をいう。以下この条において同じ。)が、当該建築物の主要構造部及び外壁開口部設備(以下このロ及び次号ロにおいて「主要構造部等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
二 防火地域内にある建築物のうち階数が二以下で延べ面積が百平方メートル以下のもの又は準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が三で延べ面積が千五百平方メートル以下のもの若しくは地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートルを超え千五百平方メートル以下のもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第百七条の二各号又は第百九条の三第一号若しくは第二号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の主要構造部等がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
三 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートル以下のもの(木造建築物等に限る。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分が第百八条各号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備に建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、当該外壁開口部設備が加熱開始後二十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであること。ただし、法第八十六条の四各号のいずれかに該当する建築物の外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分並びに外壁開口部設備(以下このロにおいて「特定外壁部分等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該特定外壁部分等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
四 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が二以下で延べ面積が五百平方メートル以下のもの(木造建築物等を除く。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の外壁開口部設備がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該外壁開口部設備の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
五 高さ二メートルを超える門又は塀で、防火地域内にある建築物に附属するもの又は準防火地域内にある木造建築物等に附属するもの 延焼防止上支障のない構造であること。