相続

相続税と鑑定評価書の活用場面

相続税の不動産評価は基本的には以下の計算式で行う。

土地: 相続税路線価×面積×個別補正
建物:固定資産税評価額

相続税路線価は実勢価格の8割といわれている。

建物の固定資産税評価額は、築年数が新しい場合には時価の50%前後と言われており、相当割安になっている。
なお、建物の固定資産税評価額は、経年により減価(経年減点補正率を乗じる)が行われているが、最終的には残存20%の価値が残るため、古い建物は割高になっている。

よって、例えば、「現金1億」を「戸建住宅」にかえておくだけで、相続税評価額は約6割の水準になるといわれている。
しかも不動産は高額であるため、不動産は相続税節税の柱になるものである。

建物の鑑定評価

相続税対策を中心とした税金対策のため、個人所有の建物を法人に売却する場合がある。
(土地は相当地代を取得するか、無償返還の届け出を行い、借地権の認定課税は阻止する。)

この際、個人が建物売却益を多く得ると個人の資産が増えて相続税対策上は不利になる。

よって、法人には極力安い価格で建物を売却する必要がある。
この時に、時価の2分の1未満で譲渡すると低額譲渡が税務上の問題となり、時価ベースで譲渡所得税が課せられる。

低額譲渡を回避するためには、時価がいくらなのかが問題となるが、おおよそ次の価格が検討に値する。

・固定資産税評価額
(ただし、上述のとおり、新築時は50%価格であり、古くなると割高になっている)
・簿価
(減価償却しか反映できていない。)
鑑定評価額

したがって、カッコ書きの注意点はあるものの、固定資産税評価額や簿価で対応できない場合には、鑑定評価書の利用余地がある

なお、注意点として、通常の鑑定評価にて考慮している以下の減価は否認されるので注意が必要である。

・建付減価
・建物取り壊し最有効使用(※建物ゼロ評価はリスク大、最悪でも残価率で若干の価値を残す必要がある。)

土地の鑑定評価

相続税の現場では、画一化された評価(路線価評価と倍率評価)により不都合がおきる特殊なケースにおいては鑑定評価が認めらる。

よって、鑑定評価を行っても、路線価評価などと著しい乖離がある場合は否認リスクが高い。
したがって、特殊要因がある場合に限り、鑑定評価採用の余地がある

なお、底地の評価においては、通常の鑑定評価であれば、現況地代をもとに査定した収益価格を重視する傾向にある。

しかし、相続税評価においては、収益価格を重視しても、過去の判例においては否認されている。(借地権割合のみとなる)

鑑定評価上の注意事項

価格時点は相続発生日になる。

基本的に、収益価格を重視すると否認リスクが高い。

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