継続賃料

スライド法の実務

スライド法とは継続賃料の査定における1手法であり、経済指標や基礎価格、賃料相場等の変動により求めた率により、現行賃料を変動させる手法です。

スライド法の査定方向

鑑定評価基準では、以下のとおりの意義となっています。

不動産鑑定評価基準

スライド法は、直近合意時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。
なお、直近合意時点における実際実質賃料又は実際支払賃料に即応する適切な変動率が求められる場合には、当該変動率を乗じて得た額を試算賃料として直接求めることができるものとする。

分かりやすく計算式にすると、次のとおりです

純賃料(直近合意時点)×スライド指数+必要諸経費等(価格時点)=試算賃料

また、なお書き以降には、以下の式についても触れられています。

実際実質賃料(実際支払賃料)×スライド指数=試算賃料

スライド法において査定する項目は、

・純賃料(直近合意時点)
・スライド指数
・必要諸経費等(価格時点)

の3項目となります。

それでは1項目づつ説明していきます。

純賃料(直近合意時点)

こちらは利回り法の直近合意時点における実績賃料利回りを査定する際に使用した純賃料をそのまま利用します。
説明につきましては、そちらをご確認ください。

スライド指数(変動率)

スライド指数の査定がスライド法の肝となる部分です。

不動産鑑定評価基準では、以下のとおり査定方法が記載されています。

不動産鑑定評価基準

変動率は、直近合意時点から価格時点までの間における経済情勢等の変化に即応する変動分を表すものであり、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、土地及び建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数や整備された不動産インデックス等を総合的に勘案して求めるものとする。

スライド指数は、物件の種別(事務所、店舗、住宅など)により、採用する指数は異なるとともに、継続賃料固有の価格形成要因に留意して査定します。
なお、継続賃料固有の価格形成要因とは「事情変更に係る要因」と「諸般の事情に係る要因」のことを言いますが、スライド指数に反映することが困難な場合には、鑑定評価額決定前に行う「説得力に係る判断」においてウエイトを下げて調整することも認められています。

以下、指数をご照会します。
当方が関西圏にて業務を行っている都合上、関東の指数を見逃している可能性が高いので、関東圏の案件には他に良い指数があるかもしれません。

共通して使える指数は以下の指数です。

消費者物価指数(全国、対象都市)
企業向けサービス価格指数(各種別毎にあります)
全国賃料統計
・地価公示、都道府県地価調査
・市街地価格指数
・基礎価格(積算法、利回り法において査定済み)
・対象不動産の公租公課

事務所

三鬼商事 オフィスマーケットデータ
平均募集賃料、共益費含まない

三幸エステート オフィスマーケットレポート
平均募集賃料、共益費含む

ビルディンググループ 全国オフィスビル市況
平均推定成約賃料、共益費含む

日経不動産マーケット情報 成約賃料実績
平均成約賃料水準、共益費含む

※各指標毎に、募集賃料・成約賃料の別、共益費の取り扱いについて異なります。
指数として利用する場合には問題になりませんが、相場観という意味で勘違いして外さないように注意してください

店舗

CBRE リテールマーケットビュー
この指数については、当サイトにおいても個別に紹介しています。

不動産研究所 店舗賃料トレンド

地代

・継続地代の実態調べ(日税不動産鑑定士会)
東京では抜群のデータですが、関西圏では使えません。
最新号は普通に買えますが、古い号になると購入できません。
しかし、日税不動産鑑定士会に連絡することで、過去の数値をFAXで回答してくれますので、いざという時はお願いするといいでしょう。

関西圏では有力な地代データがありませんので、公租公課や地価の推移、地上建物に該当する指数(事務所・店舗など)により査定します。

ほとんどの指数はインターネットで調べることができますが、書籍に頼る必要がある指数も偶にあります。 指数だけが目当ての場合は、図書館等を利用して効率的に調査していきましょう。

必要諸経費等(価格時点)

こちらは差額配分法の新規賃料査定において、積算賃料査定の際に使用した必要諸経費をそのまま利用します。
説明に関しては、そちらをご確認ください。

スライド法の適用について

上記で、必要な項目を査定することができたので、式に当てはめてスライド法による試算賃料を査定します。

ところで、式は2つありました。
どちらの式を使えばよいのでしょうか?

1.純賃料(直近合意時点)×スライド指数+必要諸経費等(価格時点)=試算賃料

2.実際実質賃料(実際支払賃料)×スライド指数=試算賃料

どちらの式を使うかは、スライド指数の査定内容や、実際の必要諸経費の変動などにより決めます。

例えば、事務所賃料の場合は、スライド指数の査定において、募集賃料や成約賃料の変動率の割合を多く採用することから、現行賃料にそのままスライド指数を乗ずる計算式のほうが合っているといえます。
反対に、基礎価格などの純賃料の変動に重きをおいている場合には、純賃料にスライド指数を乗ずる計算式が合っているでしょう。
というのが、基本的なお話ですが、スライド指数が大きい場合には注意が必要です。

この2つの式の違いを説明します。
まず、項目を合わせます。

実際支払賃料=純賃料(直近合意時点)+必要諸経費等(直近合意時点)

ですので、それを代入して、並べると以下の通りとなります。

1. 純賃料(直近合意時点)×スライド指数+必要諸経費等(価格時点)=試算賃料
2.〔純賃料(直近合意時点)+必要諸経費等(直近合意時点)〕×スライド指数=試算賃料

上記の様に並べると分かりやすいのですが、必要諸経費に違いがあります。

すなわち、
1の式は、必要諸経費等(価格時点)
2の式は、必要諸経費等(直近合意時点)×スライド指数
となっています。

したがって、
必要諸経費等(価格時点)必要諸経費等(直近合意時点)×スライド指数
が成立するのであれば、同じ式ということですので、どちらを使っても問題ありません。

しかし現実的に、必要諸経費が直近合意時点から価格時点までの間に大して変化しない場合には注意が必要です。
例えば、古い店舗の一棟貸しの場合等は、維持管理費や修繕費等は大して変化しませんし、建物の公租公課も下限です。
そのような状況のもと、例えば130%のスライド指数を実際支払賃料に乗じる式を採用した場合、必要諸経費が1.3倍になりますので、現実とは異なる値となり、突っ込みどころのある査定になってしまいます。

安易に都合のいい式の選択はせずに、現実的にどちらが即しているのかを判断したうえで、計算式を設定してください。

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